——“触らないこと”が、最も確実なお手入れです——
お仏壇を掃除するとき、金箔部分のホコリや指紋が気になって、つい軽く拭きたくなることがあると思います。
しかし——金箔は見た目以上に繊細な素材であり、どんな理由があっても触れないことが基本です。
乾いた布で拭くのも、濡らした布で拭くのもNGです。
「ちょっとホコリを取るだけ」「少しだけ磨こう」と思っても、その一瞬の摩擦や湿気、皮脂が金箔を傷めます。
拭いた直後は変化がなくても、数日後にくすみや剥がれが浮き出ることもあります。
「きれいにしたい」というお気持ちは、とても大切なものです。
ただ、その気持ちを守るためにも、金箔には“触らないこと”が最大の手入れであることを知ってください。
お仏壇の金箔は、厚さわずか0.0001ミリ。髪の毛の約200分の1しかありません。
職人は息を止め、風や静電気にも細心の注意を払いながら、一枚ずつ丁寧に貼り上げています。
金箔を支えているのは、漆や天然の接着剤(にかわ)です。
これらは自然由来の素材のため、湿気・摩擦・油分に非常に弱い特徴があります。
乾いた布で拭くだけでも摩擦熱で表面の金が削れ、濡れた布では接着層が緩み、縁からめくれてしまうこともあります。
また、手の皮脂や汗には微量の酸や塩分が含まれており、触れた部分が時間をかけて酸化し、シミや変色につながります。
金箔は「磨いて輝かせるもの」ではなく、「年月とともに深みを増すもの」。
少し落ち着いた色合いになるのは劣化ではなく、自然な経年変化です。
無理に元の色に戻そうとせず、その変化を「美しさの証」として受け止めてください。
弊社には、次のようなご相談がよく寄せられます。
・「柔らかい布で軽く拭いただけなのに、金がはがれて白い下地が出てきた」
・「除菌シートで拭いたら、ツヤがなくなってしまった」
・「汗を拭いた手で触ったら、指の跡が残ってしまった」
これらはすべて、“少し触れただけ”の行為から起きたものです。
特に乾拭きは摩擦と静電気の影響で、金が粉のように落ちてしまうことがあります。
また、「金属磨き剤を使って輝きを戻したい」という方もおられますが、これは最も危険です。
金箔は金属ではありますが、極薄の膜状で貼られているため、研磨剤を使うと一瞬で剥がれ落ちます。
たとえ輝きが少し落ち着いたように見えても、それは自然な状態。
お仏壇は“新品のようにする”ためのものではなく、祈りの時間を重ねる場所です。
金箔を守るための基本は、この三つだけです。
素手でも布でも、金箔部分には触れないこと。
ホコリが気になるときは、柔らかい羽ぼうきや筆で“空気を払うように”扱う。
汚れやくすみが気になるときは、自分で拭かず、専門職人に相談を。
職人は、漆や接着層の状態を見極め、専用の溶剤と筆を使って慎重に処置します。
表面を「磨く」のではなく、素材がこれからも呼吸できる状態に戻すのが目的です。
金箔は、手で磨いて輝かせるものではありません。
あなたが祈りを重ねる時間が、その輝きを自然に育てていきます。
無理に光らせようとせず、「長く守る」気持ちで接してあげてください。
どうしてもくすみや汚れが気になるときは、自己判断せず職人に相談を。
お仏壇の金箔は“触らないこと”で守られます。
それが、百年先まで祈りの場を美しく保ついちばん確かな方法です。
金箔修復・お仏壇クリーニングのご相談は仏壇工房まで。
専門職人が一基ずつ状態を確認し、最適な方法で金箔の輝きを整えます。
仏壇の修復に携わり三十余年。
金箔・漆・木地・装飾金具といった各工程を深く理解し、
一基一基に宿る「ご家族の祈り」と向き合いながら、
伝統技術を次の世代へつなぐことを使命として活動しています。
現場で培ってきた経験を多くの方に役立てたいという思いから、
金箔のお手入れ、修復の考え方、仏壇づくりの背景にある文化、
さらには職人としての日々の気づきまで、幅広いテーマのコラムを執筆。
「何をどうすれば大切な仏壇を長く守れるのか」を、
専門知識だけでなく、暮らしに寄り添う視点からわかりやすく伝えています。
お仏壇の修理・クリーニングは
仏壇再生の専門職人にお任せください
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